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編集者/ライター 伊藤哲也いとうてつや

1962年生まれ。札幌市在住。ススキノに通って35年。編集者兼ライター。
時おり俳句を詠む(お気に入りは「恋は待つもの紫陽花枯れても」)。JR北海道の特急車内誌に連載も。ブログ「いい人といい話 男酒」(otokozake.com)で、日々のうたかたを綴っている。近影はゼロ番地の「酒房ぼんてん」にて。


すすきのゼロ番地

「すすきのゼロ番地」は北海道最古の公団住宅(1958年築)の地下1階にある。東西に延びる狭い廊下を挟んで、居酒屋、スナック、手打ち蕎麦、イタリアンなど30軒ほどが、肩を寄せ合うように看板を連ねている。おおむね8席ほどで、どの店も個人経営。すなわち客は、味と店主を選んで暖簾をくぐる。私は師匠と呼ぶ人に連れられたのがきっかけで、10年ほど前から、その中の一軒に通うようになった。
「今夜は蒸し暑いですね」「台風が近いらしいな」廊下の中央にある共同トイレで、他の店の客と会話を交わすこともある。ゼロ番地には何やら呑兵衛の共同体といった趣があり、一種の連帯感を生む磁力が備わっているようだ。このビルの1階は市場、2階以上は住宅である。ネオンの海のただ中に位置しながら、人が暮らし、モノが行き交う生活空間であり、戦後の復興と高度経済成長、バブルの崩壊、失われた数十年、そしてコロナ禍を、歓楽と哀愁のうちにくぐり抜けてきた。ここで飲む一杯の酒には、ススキノの光と影が宿っている。

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